『不全世界の創造手』というSF小説を、404 Blog Not Foundにて書評を読み面白そうだったのでAmazon.co.jpで技術書の類と一緒に購入し、昨日届いたので早速読みました。約2時間で読了。まだまだ遅いなぁ。
VNマシンという自己複製機能を持ったロボットを実現させようとしている天才エンジニアの少年ユーキと、人の才能を見抜くことに抜群の勘を持った天才投資家の少女ジスレーヌ(ジス)。二人の天才が出会い、協力し、世界を大きく変えていく。
簡単に説明するとこんな感じでしょうか。まぁSFノベルなんですが、Amazon.co.jpの説明文では、新感覚近未来青春物語
とも書かれています。そんなジャンルあるんかいな…。読んでみての感想は大方の書評と同じで、4.5つ星ぐらいといったところ。かなり満足。
ユーキとジスのあまりに現実離れしたその天才っぷりは、もう突っ込み所満載なフィクションだけど、その分、その現実離れした能力で世界を大きく動かしていく爽快感は大きい。彼らは実在しないフィクションだけど、もしも実在していたら世界はこんな風に変わるのだという期待感とも言える。
そして本書の大きな特徴の一つは時間の進み方。物語の初めで12歳のユーキ少年が描かれ、物語が進むにつれて歳をとり、エピローグでは正確な記述はないが25歳ぐらいだ。この時間の進み方、つまり物語の進み方が実に滑らかで無駄がない。描かれている時間と描かれていない時間の両方に面白さが散りばめられていて、少しずつ夢の実現に近づいていく期待を増幅してくれる。そう、描かれていない時間でも物語は当然進んでいて、それでもそこで何が起きたのか想像がつく。ああ、この1年の間でまた夢に近づいて行っているな、と。
考えてみると「天才モノ」が結構好みで、「天才ファミリーカンパニー」という漫画とかがかなり好きです。ずば抜けた天才が、現実的な世界で活躍するという構図が、分かりやすくて爽快なんですよね。ファンタジーの世界にも天才は現れるけれど、ファンタジーの場合は個性的なキャラクターが多く出てくるのが当たり前なので、そこまで爽快さを感じなかったりする。リアルな世界に場違いなぐらいの天才がいるからこそ面白いのだろうと思う。
ところで、青春って言っても夢を追う方の青春の意味合いが強くて、ユーキとジスの恋愛描写はかなり少ない(人によっては物足りないかな)感じなので、そこは「想像」で補わないといけませんが(あの後船倉で何やったんだー、とかね(笑))。それもまた面白さの一つ。そんなわけで、本書はSFだけど、天才物語もしくは新感覚近未来青春物語が読みたい人にオススメです。